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「デザインの伝え方ワークショップ|伝わらないのは自分のせい…という視点を持ってみる」に参加しました

9月2日に名古屋栄のナディアパーク・デザインセンタービルで行われたAQUENTさん主催のイベント「デザインの伝え方ワークショップ|伝わらないのは自分のせい…という視点を持ってみる」に参加しました。講師はフリーランスデザイナーの長谷川恭久さん。長谷川さんのブログcouldは実践的な内容というよりはデザインの思考法について書かれているものが多いので、実務経験がない私にも読みやすく勉強になるものばかりです。

また初めてのweb勉強会ということもあり、私は主題となっている「デザインの伝え方」について考えるという前提の他に、事前に2つの目標を立てることにしました。それは「どのような空気感の中で話し手が内容をどう進行し聞き手がどう受け取っているかを観察する」こと、そして「できるだけ多くの業界で活躍している方々とお話しする」ことです。以上を頭の片隅に置きながら、本編内容から感じ取ったことなどをメモしていきました。

欧米と日本の伝え方の違い

両国ではそもそもデザインの伝え方自体に差があるそうです。デザインに限らず、確かに欧米は一人一人の主張がはっきりしているイメージがあります。なんでも、長谷川さんが学生の時に通っていたアメリカの学校にはプレゼンの授業があったそうです。確かに、話し方から、プレゼン時の態度、身振りなど事細かに指導を受ける機会は、日本ではあまり見受けられませんね。

日本人の「答えがないものへの感覚」

ここでは少し実体験をお話しします。いきなりですが、私は劇団に所属しており、現在は次回公演の演出として作品の司令塔を担っています。この仕事のうち一つに、稽古の中で役者さんが発する言葉のニュアンスや仕草にフィードバックを行うというものがあります。思考法の主張というよりはむしろ、後に記述する批評のケースになりますが、ここでの「伝える内容」と言うのも、デザインと同様に「明確な正解のないもの」です。そしてこれを伝える場合、数学のように答えがきっちりと決まっているものに対して、自分の持ち合わせている感覚・思考のフィルターを通す必要があるため、自己への信頼度が大きく影響してくると考えています。

例えば、私が目の前の役者さんに対して「今は攻撃的な言い方になっているが、ここはつい言葉をぶつけてしまった人物の余裕のなさが欲しい」と思ったとします。


それを言葉として発するまで、私は様々なフィルターを通してこの感覚を検証していきます。


「そもそも言葉をぶつけてしまえば攻撃的な言い方になるのではないか?」「それなら伝え方よりも目線や表情からアプローチした方がいいのかな?」「他の役者たちはこのセリフをどう捉えたのだろう?」「この感覚を持っているが私だけだったらどうする?」「そもそもプロの演出家ではないのだから」などなど。


その結果、出力される言葉には「〜かな。」「私は〜と思うけどあなたはどう思う?」「違ってたらごめん。」など主張をかなり和らげた「含みのある便利な言い回し」が加えられてしまうのです。

必要なのは「批判」ではなく力にするための「批評」

実は、イベントに参加する前にも批判と批評の違いについて考えたことがありました。私の批判の捉え方は概ね長谷川さんと一致しており、「そのもの自体を批判する言葉」です。これは、「自身の感覚フィルターに直接仕掛けてくる攻撃」のようなものだと考えています。こちらが出した提案に対して、「だめだ。」「ちゃんと考えたのか。」など頭ごなしに正誤判断のみ押し付けるようなことです。

そのような「批判」に対して「批評」は、対象をよりよくするための助言であるべきだと捉えています。それ故、私は今まで

  • 現状
  • 自分の考え
  • 理由
  • 提案

をするように心がけてきました。また、ここでの提案が機械化してしまわないようにという点もなるべく意識してきました。イベントで扱われたデザインに対する機械的な提案とは「ここのボタンを少し大きくして、色は赤で」というようなもの。私が演劇の稽古で発するものに置き換えるならば、「ここは2秒くらい間をとって、この一文の最後の音に次の一文の最初の音を合わせて」というようなものですね。このような機械的な提案のマイナスの影響は自覚しているのですが、どうしても他の伝え方がわからなくなってしまった時は最終手段として発してしまうことがあります。

では私は普段どのような提案を意識しているかというと、「事例を使う提案」です。私の感覚で正解を押し付けるのではなく、「例えばこんな風にしたら強調されると思うし、こんな風にしてもいいんじゃないかな。」と、考えるための材料を増やしていくイメージを持っています。そして役者さん自身が考えてくれた様々な表現を受け取り、精査していきます。

一方、長谷川さんの考える批評はこのようなものでした。

  • 理由
  • 現状
  • 自分の考え

私の考えていた批評と大きく違う点は、「提案」というフローがないことです。私はデザインに行う提案に対してこの型がより適用される理由を2つ考えました。1つ目は、デザインは目に見え形に現れるものが大半という性格上、提案がより機械化されやすい傾向にあるのだという考えです。機械化された提案は指示に過ぎないため、それを受けたデザイナーの思考が育たないという意見は非常に納得しました。2つ目は、そもそも提案は批評の中にあるべきでなく批評と横並びにあるべきものなのではないかという考えです。さらにその提案は批評をする側が与えるものではなく、批評をされた側が返すものであるべきなのだろうと推測しています。

この批判と批評の違いの話は、私自身も一度誰かと意見を交換して話したかったことの一つだったので、非常に興味深く聞かせていただきました。

座学を経てのグループワーク

グループワークでは、実際にペルソナを立てて、「その人が受ける圧力」「望む見返り」「優先順位」の3つを考えた上である提案をどう伝えていくかを検証しました。現役で活躍されているwebデザイナーさんと同じ机でワークに参加したことで、社内のパワーバランスや、外注などを使った社外の繋がりがいかに影響してくるのかなど、学生視点では得られない感覚に触れることができ、新鮮でした。

またワーク内では、まだ私の中で意味が結びついていない単語も多く扱われたので、勉強に対するモチベーションも一層上がりました。その都度わかりやすく説明してくださった同じテーブル内のデザイナーさんには、大変感謝しています。

懇親会とまとめ

まず全体を通して、非常に身になる経験をさせていただきました。会場の雰囲気は想像よりも和やかでしたが、一方質疑応答では参加していたデザイナーさん、ディレクターさんの一人一人に、仕事やwebの世界に対して持ち合わせている熱意を感じ取ることができました。

またイベントの主題は「デザインの伝え方」でしたが、ここで扱われた思考法はデザイン以外でも汎用できるものでした。ITがどんどん発達していく現代では、「わからなかったらググればいい」という感覚が浸透してきており、私たちもつい手っ取り早く答えを求めがちです。しかし本来は「考える」ことを無視してはならず、忘れるべきではないのだと思います。この先、どんなにキャリアを積んでもその原点は常に持ち続けたいと強く感じました。

最後になりますが、主催のAQUENTさんをはじめ、長谷川さん、グループワークや懇親会でお話ししてくださった参加者の皆様、そしてこのイベントに参加させてくださったアップルップルさんに感謝申し上げます。ありがとうございました。


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